好きになんか、なってやらない
 
「顔が?」
「顔も。中身も全部」
「ドMだね」
「結構俺、Sな男だと思ってたんだけどな」
「でも私、毒吐きまくりだけど」


バカみたいな会話をして、お互いに笑い合った。

こんな何でもない時間が好き。
いちいち会話を選んで、相手の顔色をうかがうなんて私たちの間にはない。

言いたいことを言い合って
それを笑い話へとしてしまう。

だから私は、凌太を選んだ。


笑っていたら、いきなりふわっと浮いた体。

「え?」と思ったときには凌太に抱きかかえられていて、そのままドサッとベッドへとおろされていた。


「……何?」
「なんでしょう?」


こんな時ですら、冷静に反応。
だけど相手は、ニコニコと笑っている。


「俺がドSだってのを見せてやろうと思って」
「……やめて」
「嫌」


そう言うや否や、降ってきたのはキスの嵐。

今になって、さっきの会話に後悔する。



「俺がどんなに玲奈が好きか、教えてあげる」



いらない教えは
問答無用で明け方まで続けられた。
 
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