好きになんか、なってやらない
 
「お待たせ!帰ろ」
「うん」


真央の帰りの準備が終わって、一緒にフロアを出た。

外はすでに真っ暗で、夜風が少しだけ冷たい。


「いやー、今日も見事な振りっぷりだったね!凌太さんに」
「やめてよ……。今、あの人のこと思い出したくない」
「あはは、明らかに不機嫌になった」


私の反応を見て、面白そうに笑う真央。

他人から見れば面白いかもしれないけど、本人からしてみたら、物凄い迷惑な話なのだ。


「でもどうして、そんなに凌太さんを嫌うの?あんなに上玉な人なんて、そうそういないよ?」
「上玉って……。べつに、顔がいいだけじゃ、上玉なんて言わないでしょ」
「凌太さん、顔だけじゃないじゃん!
 性格も面白いし、仕事もできるし、頼りになるし!
 あたしだったら、凌太さんなら速攻OKするのにー」
「だーかーらー……」


周りの女の子は、決まってそう羨ましそうに言う。


確かに、真央の言うことは当たってる。

冗談をいつも言う岬さんは面白いし、人当たりもいいから自然と人が集まる。
仕事もスマートのやりこなし、チームリーダーとして、上司たちからも期待されていた。

だけど……



「何度も言ってるでしょ。
 私が異性に求めているのは、硬派な男なの!」



どんなにいい男でも
ちゃらけた男は勘弁だ。
 
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