好きになんか、なってやらない
 
「硬派って……。絶対にそんな男、つまんないって」
「つまんなくない。騙されるよりマシ」
「アンタ、男をどういう目で見てんのよ」
「……」


一言で言うなら、苦手な対象だ。

全ての男の人が…というわけではない。
仕事人間だったり、真面目そうな人なら平気。

だけど岬さんのような、女慣れしている男は、とくに苦手なのだ。


全ては、過去の嫌なトラウマから……。



「とにかく、チャラいのはダメ!
 岬さんを好きになる確率考えたら、部長を好きになる確率のほうが高いってこと!!」



いい加減、岬さんの話をされるのが嫌で、ありえない相手も対象にスパッと言い切ってやった。

部長とは、もう50を迎えた、髪も薄くなりつつある独身部長のことである。
見た目はいかにも親父……といった感じだけど、とことん真面目な人なので、本当のことでもあった。


スパッと言い切ってやったせいか、真央からの反論が返ってこない。
やっと納得したか。と思い、顔を上げると……



「へえー。俺があのハゲよりも下だとはねぇ……」

「げ……」



そこには、真央の姿ではなく、
今まさに話題としている、岬凌太の姿があった。
 
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