好きになんか、なってやらない
 
店から出てきたのは、まさにさっきまで岬さんの回りにい続けていた香織。
同期の中でも、きわめて岬さんの取り巻きだ。


さっき、岬さんが何かを言いかけたような気がしたけど、そんな雰囲気なんかあっという間になくなっていて……


「香織、そんなことないよ。来てくれてよかった」
「えー、ほんとに?今、抱き合ってなかった?」
「勝手に抱き着かれてただけ。困ってただけだから」
「そうなんだー」


私の言葉を聞いて、若干カチンときているようにも見えたけど、笑って受け答えをしていた。


「凌太さん、ダメですよー。いくらなんでも抱き着くのは。
 セクハラで訴えられちゃいますよ」

「あ、あー……そうだな」


岬さんは、何かを言いたそうに、じっと私を睨んだ。

だけどそんな視線なんかスルリと交わす。


「香織は岬さん、探しに来ただけ?」
「あ、そうそう。そろそろこの店で一回お開きにするから、呼びに来たの」
「そっか。じゃあ、戻るか」


確かに飲みが開催されて、もう2時間以上経つ。
金曜日の店は、だいたい2時間制のところが多く、過ぎると店から追い出される。



席へ戻ると、すでにお金が集められていて、指定された金額を出した。

いっぱい飲んだけど、先輩たちのおかげで低額で済むのは感謝したい。


靴を履いて、店の外へ出ようとしたとき、スッと誰かが私の隣に並んだ。
 
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