好きになんか、なってやらない
 
「み、岬さん……」
「ひでぇなぁ……。俺、こう見えて、まだまだ20代のイマドキ男子のつもりなのに。
 50過ぎたオッサンに負けてるってこと?」


ズイと前に出て、にこりと微笑みながら私の顔を覗き込む。

近くで見れば、確かにその顔は見惚れるほど整っていて、一瞬呑まれそうにもなった。


「せ、世間一般的から見れば、岬さんのほうがいい男かもしれないですけど。
 私から見ると、そう見えてるってことです」

「……」


だけどここで怯んだら相手の思うつぼ。
同じように、にこっと微笑んで、もう一度面と向かって言ってやった。


「俺、結構硬派だよ?」
「そうは見えないです」
「こんなに、玲奈一筋なのに」
「その割には、いつも女の子をはべらせてますよね」
「それは勝手に寄ってくんの」


ほら……。この言い方が気に食わない。

それに知っている。
この人が、私にアプローチをかける前までは、手当たり次第、女の子を相手にしていたということ。

根が女たらしであるとすれば、たとえ今、私一筋だと言い切っているとしても、絶対に浮気されて捨てられるに決まっている。


「玲奈が俺の彼女になってくれるんなら、いっさい女の子と絡まないよ」
「必要ないです。彼女になるつもりもないので」
「なんで?」
「だから好きにならないって言ってるでしょ!!」


あーもう!
話が分からない男だ!
 
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