SEL FISH
驚きながら、その雰囲気に気圧される。
「自分しか、自分を正当化してあげられないんだよ? もしも堂本さんが今の堂本さんを好きだって思うなら、過程にあったことを謝っちゃ駄目」
厳しい言葉。
「私が許して欲しいのは、いのりちゃんにじゃない」
風が抜けた。まだほんのり冷たい。
「私にだから」
頬に落ちる涙。一粒だけ。それを美しいと思った。
いのりちゃんは少しだけ悲しい表情のまま固まった。何を考えているのか分からない。
「桜がね、咲いたって、テレビでやってた。だから、一緒にアキも連れてお花見行こうね」
屈託のない笑顔が見える。
私は、笑って頷いた。
end.
20150323