SEL FISH

驚きながら、その雰囲気に気圧される。

「自分しか、自分を正当化してあげられないんだよ? もしも堂本さんが今の堂本さんを好きだって思うなら、過程にあったことを謝っちゃ駄目」

厳しい言葉。

「私が許して欲しいのは、いのりちゃんにじゃない」

風が抜けた。まだほんのり冷たい。

「私にだから」

頬に落ちる涙。一粒だけ。それを美しいと思った。

いのりちゃんは少しだけ悲しい表情のまま固まった。何を考えているのか分からない。

「桜がね、咲いたって、テレビでやってた。だから、一緒にアキも連れてお花見行こうね」

屈託のない笑顔が見える。

私は、笑って頷いた。



end.
20150323


< 118 / 328 >

この作品をシェア

pagetop