いつだって、私は。
smile

*雨のち心


.





雨が、降っていた。







.







ぽつり、ぽつりと落ちる雨の音。じわじわ地面に広がる水。
傘を持たずに家を出てしまった私は運悪く帰宅途中に雨に降られた。


なんとか近くにあった公園の、小さな屋根のついたベンチの下に駆け込んで。夏服のブラウスを脱いで藍色のタンクトップになってブラウスに染み込んだ水を絞る。


ぐ、っと手に力を込めるとじわりと水が染み出した。









.









「…あの、隣っていいですかね」









タンクトップ姿の私に遠慮がちに声をかける人の声。
反射的に振り返った。









____知らない、男の子だった。




黒い短い髪の毛がぺしゃっとしている。
目つきは少しばかりきつめで、でも怖い感じじゃなくて。
困惑したように頬を掻く背の高いそのひとはどこかで見たことはあるような気がした。









「あ、どうぞ…?」









どうも、と言って隣というか斜め後ろくらいに座る男の子を横目に、気まずい空気を感じながらそっと水分の抜けかけたブラウスを着た。


雨は、弱まることを知らないように激しくなっていた。
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