吸血鬼くんの話、
「元々は黒髪なんだけどさ、いつのまにか赤くなってきた。タオルもスカートも気づかない内に。記憶がない時間も多くなってきたから、もう、明ちゃんとひかりちゃんには当分会えないんじゃないかな」
微笑んだまま、続ける。
会えなくなると、言った。
「……俺もひかりも、悪霊とは会話できない。部長にとり憑いてるのは明らかに悪霊だ。俺たちには何もできない」
人に憑いているだけで、悪霊と分かる。
悪霊と会話できるのは明日香だけだ。
彼女をまきこみたくない。
「それでいいよ。長い年月をかければ“この子”は自然に消えていく。明日香ちゃんがオレの不在に気づけばすぐに戻るが…お前たちには話しておきたかった」
しんみりとした空気のなか、彼は話を続ける。
「今、この町によくないものがいる。黒髪で、月のような瞳を持つ元、人間。そいつが、人を拐かしいる」
……つまり、誘拐?
月のような瞳って…もしかして満月の…こと?
「他に、特徴は…?」
信じたくない。
いや、自分も黒猫であった満月の後を追っていたから否定できないけど…。
「若い、男を狙うらしい。後は…誘拐された子は全員戻ってきていない。死体も、出てきていない。襲われた者の特徴は黒髪であることと、ブルーアイズであること」
黒髪で、青い瞳…。
自分は違うけど、どうなのだろうか。
満月が、それなのだろうか。
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