孤独女と王子様
店長はきちんと私の気持ちを汲み取ってくれている。

私は今回の話を例えば断ったりするようなことがあれば、店長の顔に泥を塗ることになるような気がした。

「はい。頑張ります」
『ありがとう。異動は4月1日付。明日、本部の大会議室で辞令交付だ』
「分かりました」

気持ちを新たに、来月から頑張ろうと思った。
でも、そのためには…剛さんの激励の言葉が欲しかった。

翌日、辞令を貰った夜。

スラジェに剛さんを呼び出し、今回の異動の話をした。

『次の由依ちゃんの居場所だね』

剛さんは私の話に対してそんな表現をしてくれた。

「私の居場所は、書店で直接お客様に対応することだと思っていたんだけど…」
『でも、由依ちゃんだって会社員なんだから、居場所を厳密には自分で決められないよね』

"それよりも…"と、剛さんは続ける。

『由依ちゃんと僕の時間が今までのように取ることが難しくなっちゃうのかなって不安に思うんだ』

そう言って少し寂しそうな顔をした剛さん。
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