孤独女と王子様
今までは、断る理由を曖昧にしてきた。
でも、今日からは堂々と言ってやろう。

「"彼女"が待っているので」
『え?成瀬川さん、彼女がいらっしゃるんですか?』
「はい」

僕はさも当たり前のように宇梶さんに伝えた。

僕は由依ちゃんのことはずっと"彼女"のような付き合い方をしてきたし、今ではさらに溺れるくらいの恋をしている。

『前に"いない"っておっしゃってたじゃないですか』
「状況は変わるものですよ」
『どこかの令嬢さんですか?』
「いや、ただのOLさんですけど」

宇梶さんに言うのは嫌だった。
由依ちゃんが書店員であることも。
ましてや、舟さんの実娘であることも。

言うのが嫌な理由は・・・宇梶さんは商社の社長令嬢。
ここに入った理由は知らないけど、とにかくその立場を隠すことはなく、何でも立場を使って実力行使で手に入れるお嬢様。

彼女を怒らせるとどんなしっぺ返しが来るか分からないけど、用心するに越したことはない。
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