孤独女と王子様
約1年ぶりのマンション訪問。

母さんは女優…として出迎えてはないな。

髪は1本に結んで、エプロンをしている。
お世辞にもおしゃれとは言えない。

『いらっしゃい、由依ちゃん。待ってたのよ。剛の母の里絵子です。よろしくね』

濡れていた手をタオルで拭きながら挨拶をする母さんに、今は女優オーラがない。

『あ、あの、初めまして。神戸由依です』

緊張からか、声がやや震えている。

『さぁ、そこに座って』

と、ダイニングに座るように言われた。

由依ちゃんの真向かいに座った母さん。

『剛、こんな可愛い子はアンタには勿体ないわね』

由依ちゃんを見ながら母さんは僕に言う。

「"私の事務所にスカウトするわ"でしょ」
『あら、よく分かったわね』
「あいにく、母さんの息子になって今年で27年になるものですから」
『あら、剛のくせに生意気な口を叩くのね』
「由依ちゃんはあげないよ」
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