孤独女と王子様
みっともない親子の会話。
本格的な喧嘩にはならないんだけど、この母親はワガママ女優なのでいつも手強い。

『由依ちゃん、どうして剛なのよ』
「実の息子でも失礼すぎるでしょ」

由依ちゃんはしばらく僕と母さんの会話の傍観者に徹していた。

『ダメ、ですか?』

母さんの問いかけの答えとして、由依ちゃんはそう言って真っ直ぐ母さんを見た。

『剛さんは私を心の闇から脱出させてくれた恩人です。私のひねくれた性格できつく当たる言動をしても、辛抱強く私の側にいてくれたんですから』

母さんは由依ちゃんの言葉に対して首を縦に振って聞いていた。

『それはそうよね。聞いたわよ、舟から』

母さんは既に由依ちゃんのお父さんが舟さんであることを聞いているみたいだ。

舟さんと母さんは幼なじみ。
年齢も同じ。

仲良しだけど、しかし付き合うような関係にはならなかった。

近すぎてお互いが異性に見えないらしい。
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