孤独女と王子様
『由依、あなたも座りなさいよ』

と言われたので、お母さんの隣に座った。

『寂しいもんだよね。社員の家族を含めて守らなければならない立場のために、自分の結婚を犠牲にしなければならなかった家柄が。本当は死んだ親父だって、俺と律子のことは反対したくなかったんだ。でも業績が悪かったことで、人が変わってしまって』

お父さんは一気にビール缶を飲み切ったようだ。

『剛が跡を継ぐ"ゴールドホテルグループ"は全国にビジネスホテル、リゾートホテル、レジャー施設など、鍬形よりもさらに事業内容が細かくて、景気の浮き沈みをもろに受ける業種を生業(なりわい)としているから、舵取りはなかなか難しいはずだ』
『従業員はグループ合計13655人だね』

後ろから声がした。

『僕を置いてみんなで飲んじゃって、ずるいなぁ』

辺りが暗くなり始めて、サッカー遊びを止めた剛さんが啓慈くんと戻ってきた。

『はいよ、お前も飲め』

と、ビール缶を渡すお父さん。
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