孤独女と王子様
僕には小林さんが何を言っているのか分からなかった。

由依ちゃんと2人で不思議そうな顔をしていたのだろう。
その様子を見た舟さんが、小林さんのこれまでの苦悩を話してくれた。

時は25年前。
由依ちゃんが生まれる前に遡る。

律子さんが由依ちゃんを身ごもったことを知った舟さんのお父さんは、当時は舟さんのお父さんの会社で秘書を務めていた小林さんに、律子さんに対して中絶の説得をする役割の担うことになった。

最初は"会社のため"と思って執拗に中絶を律子さんに迫っていた小林さんだったが、頑なに断る律子さんを見るうち、立場を自分に置き換えてみるようになる。

家族を顧みず、ひたすら鍬形家、会社のために身を投じてきた。
その結果、妻とひとり娘と・・・離縁することになってしまった。

『愛想尽かされたんです。全く家に帰らなかったもので』

どこにいるか、居所も分からず、離縁当時10歳だった娘は、あれから30年経っているのに一度も会えていない。
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