孤独女と王子様
僕の心の声が由依ちゃんに伝わってしまったのだろうか。

『ごめんなさい。狭くて』

と、言われてしまった。

「いやいや、女性の1人暮らしならこれくらいで十分でしょ。駅からも近いし、家賃も高いだろうに」
『剛さんの暮らしとは、比較できませんよ』

と、温かいお茶を用意してくれた由依ちゃん。

「僕なんて、実家におんぶに抱っこだよ。だから由依ちゃんのような1人暮らしの人って、偉いと思う」

丸い座布団の上に座り、僕はお茶を頂いた。

「このお茶って・・・」
『はと麦茶です。ビタミンも豊富で代謝も良くして、ノンカフェインですから寝る前に飲んでも大丈夫ですし。私はいつもパックで買って、煮出して飲んでいるんですよ。お口に合わなかったですか?』

多分、初めて飲んだかも。

「いや、その逆で、すごく飲みやすい。健康に気を使って美味しく飲めるのなら、一石二鳥だね」

由依ちゃんは自分の分のカップを持って僕の向かい側に座った。
足はまだ不自由そうだ。
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