孤独女と王子様
「足の具合は、どう?」
『剛さんのおかげで、痛みはもうないです。でも接骨院の人には、まだしばらくは包帯で固定してろって言われているので、その言いつけを守っています』

そう言って由依ちゃんは自分の左足を擦った。
そして"あ、そうだ"と言うと、

『あの、お約束の物です』

と、由依ちゃんはわかば堂書店の袋から、本を取りだした。

『実は、まだ私も読んでないんですけど、うちの文芸担当のいち押しなんです。ジャンルとしては、ラブファンタジーのようなものらしいんですけど』
「ラブファンタジー?」

恋愛ものだけど、非現実的ってことかなぁ。

『でも、その文芸担当って女性なので、多分私が読むだろうと勘違いしたのではと思っていまして・・・なので、剛さんにはあと1冊選択肢をあげます』

と、テレビ台の下からもう1冊本を出した由依ちゃん。
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