シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
 席へ戻った私たちは、一息ついた。
 取り皿の上には、たくさんの食べ物が並んでいる。
「ショウ君、すごい量だね……」
「雫も、どんどん追加でよそえよ。ただし、食べ残すのはルール違反だからな」
「うん、もちろん。そんなことしないよ。食べられない分は、よそわないし」
「まぁ、雫は分かってるか。とりあえず、食べ始めようぜ」
 そして、私たちは食事を始めた。
 すると―――。
 何だか、地面がスライドするように動いたような。
 すごくゆっくりだけど。
「気づかないか? ゆっくり、床が動いてるんだぞ」
「えええっ?!」
「ほら、このまま行けば、あと数分でガラス窓方向へ行けるぞ」
 ショウ君の言うとおりだった。
 もうすぐ、夜景が楽しめる!
 私は楽しみで、あまり食事に身が入らなかった。
 やがて、ガラス窓が私たちの席のすぐ横まで!
 私は思わず声が出た。
「綺麗~。ショウ君も見てる?」
「もちろん。別荘はどこかな。多分あそこあたり」
 ショウ君は指差して教えてくれる。
 そちらの方向には、明かりはまばらだった。
「夜空も見えて、素敵だね」
「おう。夏の大三角は、方角が違うせいで見えないけどな」
 言われてみれば、そうだった。
「おい、景色を楽しむだけじゃなく、料理も楽しもうぜ。同時にな」
「ああ、そうだった~」
 すっかりお食事のことを忘れてた私。
 置いていた食器を手に戻し、私は食べながら景色とおしゃべりを楽しんだ。
 すごく楽しく、幸せな食事だった。

 食べ終えて、タワーを降りた私たちは、駐車場へと歩いている。
 桜ヶ丘さん、もうすぐ帰ってくるのかな……。
 そうなったら、ショウ君となかなか二人で出歩けなくなっちゃう……。
 私は思わず言った。
「ねぇ……明日からしばらく、二人っきりになりにくくなっちゃうでしょ。だから……最後に一度だけ、お部屋で二人っきりになりたい。ダメ?」
「もちろんいいぞ。だけど、会長がご到着なさる前じゃないといけないから……急がないとな。ご連絡がまだということは、もう少し時間はあるはずだけどな」
「ありがとう、急がなくちゃね!」
「おい、雫。走ることないだろっ」
 私は思わず、車目がけて走り出していた。
 1分1秒が惜しくて。
 ショウ君がすぐ追いついてくれて、併走してくれた。
 私たちは車までたどり着くと、すぐに乗り込む。
「じゃあ、帰るぞ」
「うん。素敵なお食事に連れてってくれてありがとね」
「気にするなって」
 そして、私たちの車は、別荘へ向けて走り出した。
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