シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~

不安と焦燥

 別荘に帰り着くと、すでに8時半を回っていた。
 私たちはすぐにショウ君のお部屋へと入る。
 時間が惜しくて。
「ねぇ、そういえば……もう8時半なんだけど……。9時までに、私に全てを話してくれるんだよね?」
 私は思い出したのだった。
 そういう約束を、ケンカのあとにショウ君がしてくれたってことを。
 あと30分なのに、大丈夫なのかな。
 あの約束、もしかしてチャラ?
「もちろん、覚えてるって。その時間までに『全てにケリをつける』ってことは無理かもしれないが、俺が約束を破るヤツだと思うか? 『雫に全てを話す』ということは、確実に果たす。安心しろ」
「今じゃダメなの?」
「ああ、今は無理」
「どうして……?」
 私は早く知りたくてたまらなかった。
 ショウ君は少し考えてから、口を開く。
「もうはっきり言ってしまうと、『ケリをつけないといけないこと』ってのは、会長と俺との間のことだ。だから、会長のご到着までは、無理ってわけ」
「え?」
 まさか……言い争いとか、ケンカとか、起きないよね?
 不穏な空気を感じ、私は身震いした。
「その……。桜ヶ丘さんと、何かあったの?」
「なんか、変な誤解してるか? 何度も言ってるとおり、俺の会長への信頼の気持ちはいつも変わらない。だから、諍いなどは一切ないから、安心しろって」
 安心できないよ……。
 あと25分ほどで、9時。
 待つしかない……かな。
「ほら、時は金なり、だろ? 会長がお帰りになるまで、二人で楽しい時間を過ごさないとな。『フェリーに乗ったら連絡する』とおっしゃってたから、多分まだだろうな。……ん?!」
 何気なくスマホを見て、慌てた様子で操作するショウ君。
「どうしたの?」
「しまった! 運転中に、連絡が来てたみたいだ。今、返信したけど……。もう、会長はフェリーに乗られたそうだ」
「えええっ?!」
 そんな……。
 それじゃ、もうすぐご到着なんだ。
「もう、どんどんこちらへ向かわれてるだろうな」
「やだ! ずっとショウ君と一緒にいたい!」
 私はテンパって、駄々っ子のように言う。
 もう心の制御がきかなかった。
「俺だって気持ちは一緒だってば」
「ありがとう、嬉しい! ねぇ……最後に一度だけ、して」
「は? 『する』って、まさか……」
「うん、心の準備はできてるから。あのね……1年とか半年とか、待つの辛いけど……ここで一度だけでも、してくれたなら、きっと乗り越えてみせるから」
 胸に手を当てながら、私は言う。
 こんな提案をするの、本当はすごく恥ずかしいはずなんだけど、心が大暴走していた。
「でも、いいのかよ。それに、これって……会長に対する背信じゃないかな……」
「どっちみち、この縁談は破談になって、私はショウ君のもとに行くんだから、裏切りとかじゃないはず。そして……私の気持ちはもう固まってるの。お願い、抱いて」
 私はショウ君に抱きついた。
 もう、気持ちが抑えきれない。
 今、ショウ君に全てを捧げたくて。
 ショウ君も優しく、だけどしっかりと私を抱いてくれた。
「雫……。覚悟、出来てるってことか?」
「うん」
 私はショウ君の目を見つめながら言った。
 お互いの気持ちが通じ合ったせいか、どちらからともなく、キスをする。
 今までで一番、熱いキスを。
 そのあとすぐ、私たちはベッドに移動した。
 心臓のドキドキで、目がくらむほどだ。
 とうとう私、ショウ君と……。
 私たちはゆっくり服を脱いでいく。
 ところが―――。
 お互い、下着姿になったとき、ノックの音が聞こえた。
 こんなときに、誰だろう?!
 誰であっても、やばい!
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