シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
 桜ヶ丘さんだった!
 うそ!
 もうご到着されたの?!
 見せてもらった、あの履歴書風プロフィール用紙で、お写真を拝見したから、顔は知っている。
 実物は、写真以上にイケメンだ。
 かすかな微笑みも素敵だし。
 でも、私にとっては、ショウ君が一番のイケメンだと感じた。
 あ、こんなことを考えているのは、目の前の桜ヶ丘さんに大変失礼だけど。
 ………。
 あー!!
 私はそこでやっと気づいた。
 この事態のまずさに。
 ご到着された桜ヶ丘さんが、秘書さんのお部屋へと来られたとき、その秘書さんとお見合い相手の二人が一緒に部屋に……。
 こんな夜に、二人っきりで……。
 そもそも、桜ヶ丘さんと私が顔をあわすのって、お見合い開始の明日が良い気がするし。
 それが、こんな形で会っちゃって……。
 色々と、確実にまずい!
 私は慌てふためいた。
 桜ヶ丘さんの微笑みも引っ込んじゃったみたいだし。
「は、初めまして。このたび、お世話になります、峰霧雫と申します。明日からよろしくお願い申し上げます」
 緊張と戸惑いでガチガチになりながら、私は一礼した。
 ところが、桜ヶ丘さんは、全く怒っても戸惑ってもいない様子だ。
 落ち着いた面持ちで、お辞儀を返し、言ってくれた。
「初めまして。そんな……お顔をお上げくださいませ、恐縮です。私は……」
 そこで言葉を切り、ショウ君をちらりと見る桜ヶ丘さん。
 うう……やっぱり問題があるのかな……。
 私から、しっかり謝らないと。
 しかし、次のショウ君の一言に度肝を抜かれた。
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