シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
 ふと、その下の段へと、私の視線が移る。
 少し飛び出している本が数冊あったからだ。
 それらは、中原中也や立原道造の詩集だった。
 蓮藤さんが読まれたのかな。
 もしそうだとしたら、気が合いそう。
 なぜなら、私も詩が大好きだから。
 北原白秋も好きなんだ。
 そんなことを思っていたら、横に北原白秋の詩集もあり、少しびっくり。
 趣味が合うかも。
 そういえば、幼稚園時代のショウ君と私も、ひらがなだけで書かれた詩集を大事にしてたっけ。
 あの詩集、どこに行っちゃったのかな。
 たしか、私も持ってたはずなのに。

 その隣にあった本も、私の目を引いた。
 植物事典で、表紙にすごく綺麗な花の写真が載っていたから。
 そういえば昔、ショウ君と山でも遊んだなぁ。
 目の前の事典に載っているような、色とりどりの花に囲まれて遊んだことを思い出す。
 あと、薄暗くなり始めた帰り道、ホタルを見たこともあったっけ。
 川のそばを飛び交うホタルの群れを思い出す。
 そして、隣にいたショウ君の顔も。
 本当に楽しかった……。

 おっと、いけない。
 勝手に書庫に入り込んだ上に、考え事なんて。
 私はすぐに本を元通りにしまうと、足早に書庫を出た。
 そして、洗顔や歯磨きを済ませてから、自室に戻る。
 暑かったことと、枕がいつもと違ったことからか、なかなか寝付けなかった。
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