シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
 1階で夕食をとった後、再び両親と私はおしゃべりを続けた。
 ちなみに、夕食は両親と私だけでとることに。
 蓮藤さんやコックさんたちをお誘いしたんだけれど、「我々使用人は別で。お気遣い、本当に嬉しいのですが、規則ですから」とお断りされちゃって、仕方なく。
 やがて夜10時を回ったところで、両親が「疲れたから、そろそろ寝る」と言い出したので、私も自室に帰ることにした。
 その前に洗顔と歯磨きをしようと、階段を下りる私。
 洗面所へ向かう途中、「書庫」と書かれた部屋の前で、私は足を止めた。
 なぜなら、昼間こっそり覗いてしまった折、蓮藤さんが読んでいた本が気になって。
 何の本を蓮藤さんは読んでいたのかな……。
 覗いてしまっただけにとどまらず、そんなことまで気にするなんて。
 悪趣味だし、失礼だとも思うけど……でも……。
 蓮藤さんのこと、もっと知りたい……。
 はっ!
 私もしかして蓮藤さんのこと……。
 だめだめ!
 何考えてるの!
 これもきっと、久々の帰郷に気持ちが高ぶってるせいだろう。
 蓮藤さんがかっこいいのは事実として。
 ふと、心の中でしょうくんを思い出す私。
 するとやっぱり……。
 ショウ君に逢いたい気持ちが、膨らんできた。
 ……だけど。
 でも、蓮藤さんが読んでた本のことは、知りたい……。
 なぜか。
 そういうわけで、私は一人、その「書庫」と書かれた部屋へと足を踏み入れた。

 えっと、確か、この辺に……。
 あの時、蓮藤さんが立っていた位置を思い出す私。
 黄色い本……黄色い本……。
 あった!
 それは、基礎的なマナーについて書かれた本だった。
 基礎からきっちり復習してるんだぁ。
 何となく、真面目で実直な蓮藤さんらしいと思った。
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