シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
 ショウ君と私の「とっておきの秘密の場所」……。
 それは洞窟で、この島の沖合いに浮かぶ無人島にあった。
 その小さな無人島へは、干潮の時間に泳いでいくのがベストだったはず。
 干潮の時間なら、数十メートル泳ぐだけで、後は歩けばいい。
 干潮以外の時間だと、浅瀬が少なくて、泳ぎが大変なのだ。
 そして、ショウ君も私も泳ぎが大得意だった。
 この島の幼稚園では、すぐに海まで行ける環境のせいか、泳ぎを早く教えてくれたように記憶している。
 そういうこともあって、はっきりとは覚えていないけど、里子やオサム君たちクラスメイト全員が、そこそこ上手に泳げたように思う。
 中でも、しょうくんはダントツだった。
 バタフライや背泳ぎなども、やっていたはず。
 まだ園児なのに。
 そういうわけで、泳ぎの得意な私たちにとって、干潮の時間帯に無人島へと泳ぐことは何ら難しくなかった。
 今から思えば、「何と危険な」って思うけど。
 恐らく、両親に言えば止められていたはず。

 ともかく、そうして到着した無人島の裏手にあった洞窟……そこが私たちの「秘密の場所」だった。
 ショウ君は「秘密基地」と呼んでたっけ。
 洞窟内は、真夏の午後でもひんやりしていたような気がする。
 冷たい空気が肌を刺していた。
 そして、辺りを包む静けさに、心が落ち着く。
 ショウ君と二人っきりで、洞窟内にて何時間も語り合ったような想い出もある。
 そういえばショウ君がおどけて、「奥に海賊の宝が隠されてるかもな」とか言ってたっけ。
 きっと冗談だろうと思うけど、妙に印象に残っている。
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