シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
第4章 4日目

烏丸さんからのお誘い

 翌朝―――。
 目を覚ました私は、昨日のことをすぐに思い返し、早速笑顔になる。
 今日も大好きなショウ君と一緒。
 喜びを抑えきれない私は、元気よく飛び起きると、朝の支度へ向かった。

「おはようございます」
 リビングでは既に朝食の準備が出来ており、席に着いていた烏丸さんが挨拶してくれた。
「おはようございます、烏丸さん」
 私も挨拶を返す。
「今日中には桜ヶ丘さんがお見えになるはずですね。昨夜のご連絡では、どうやら夜になるそうですが。明日からのお見合い、よろしくお願いいたしますね。世話人として、必ずや成功させたいと思っております」
 私は複雑な気持ちになる。
 桜ヶ丘さんには、申し訳ないんだけど……。
 でも、たとえ桜ヶ丘さんがどんなに素敵な人だったとしても、結婚したくなることはあり得ないと思うから。
 私には、ショウ君だけ。
 しかし、もちろんそんなことは言えるはずがないので、無難に「よろしくお願いいたします」と笑顔で返しておいた。
「いよいよ、明日なんだなぁ」
 お父さんがリビングに入ってくるなり、言う。
 後ろにはお母さんもついてきていて、二人並んで席に着いた。
「雫、うまくやりなさいよ」
 お母さんが言う。
 うう……期待してくれている両親に対しても、申し訳ないなぁ……。
 だけど、ショウ君以外の人との結婚なんて……私にはできない。
 複雑な思いを抱えつつ、私は「うん」と答えておいた。

 烏丸さん、両親と共に、美味しい朝食をいただいた後、私は早速出発準備に移ろうと自室へ向かう。
 ところが、階段の下で、烏丸さんに呼び止められた。
「雫様、もしよろしければ、これから映画館へでも行きませんか? 桜ヶ丘さんのご到着は夜ということで、まだ時間がありますし」
「あ、えっと……せっかく誘ってくださっているのに、すみません。これから、ちょっと予定が……」
「蓮藤君との島巡りでしょう?」
「え? ご存知なのですか?」
 少し驚いた。
「ええ、聞いておりますから。でも、もう二日間、島巡りはしたのでしょう。そろそろ、映画でも見て、気分転換はいかがですか?」
「すみません。もう予定として決めておりますので。蓮藤さんにも、一緒に出かけることをお伝え済みですので」
 私はきっぱり断った。
 ショウ君と一緒がいいから。
 烏丸さんのせっかくのご厚意に対して、すごく申し訳ないけれど。
「そうでしたか、これは失礼いたしました。また機会がございましたら、ぜひ」
「こちらこそ、失礼いたしました。またお誘いくださいね。それでは」
 私は会釈をしてから、階段を上っていく。
 烏丸さん、きっと私が退屈してるんじゃないかと心配してくださってるんだろうな……。
 本当に優しい人だなぁ、と思って、ちょっと心が温かくなった。
 お誘いをお断りしたことは、心苦しいけど。
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