シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
ショウ君が私をきつく抱きしめてくれていた。
「そうだったのか……! 俺も幼稚園時代から好きだった。当時の俺は、そのことを隠してたけど。言ったら、雫との関係が壊れると思って。引越しが決まったとき、俺の心は絶望に打ちひしがれてたよ。それでも、できるだけ『何気ない様子』を装って、雫に伝えただろ。あれは確か、公園だったよな。今でもたまに思い出すよ。あの紅葉の落ち葉が、まるでじゅうたんのように降り積もった公園。雫と離れて、ずっとずっと喪失感ばっかりの日々だった。でも、これじゃいけないと思って。きっとまた逢えると信じて、俺は俺なりにやってきたつもりだ」
ショウ君も私のことをずっと……!
信じられない思いでいっぱいだった。
私は思わず、ショウ君の背中に回した手に力を込める。
ショウ君もきつくきつく、力を込めてくれていた。
「だから、烏丸さんから渡された雫のプロフィールの紙を見たとき、びっくりしたんだ。だけど、俺は何も言い出せないままだった。立場というものもあるし、それに……。雫が俺のことを想ってくれているだなんて、露ほども考えてなかったし。俺の片思いにすぎないと思ってたから、何も言えず。だから、ただ雫のそばにいられるだけで、俺は幸せだったんだ」
「嬉しい……! 私もずっとずっと、ショウ君だけを想ってたよ。この20年間!」
幸せのあまり、私は頭がボーっとしていた。
「ありがとな。ほんと、雫と再会できてよかった」
「こちらこそ! ショウ君、大好きだよ。残念なのは、この20年間だけど……。逢うこともできずにいた20年間」
「決して無駄じゃないさ。その期間があって、今の俺たちがいる。これから、俺たちの想い出を作っていけばいいだけ。そのためにも、俺はあさってまでに、全てに決着をつける。大丈夫、心配そうな顔をするなって。全て丸く収まるから」
ショウ君は笑みを浮かべると、優しく頭を撫でてくれた。
「あさって……待ってるからね」
「ああ。それに、明日がまだあるだろ。明日、また一緒に出かけるんじゃないのか」
「もちろん、一緒に出かけるよ!」
「ははは。急に元気いっぱいになったな。それでこそ、雫らしいよ」
楽しげなショウ君を見て、私も笑顔になる。
「明日もまた、よろしくね。どこに連れてってくれるの?」
「まだはっきりとは決めてないけど、山とか展望台はどうだ? 景色が良いスポットだからな」
「うん、是非お願い」
「おう、任せとけ」
それから、またしばらく、抱き合っていた私たち。
やがて、私が言った。
「お仕事、まだあるんだよね。忙しいところを、呼んでくれてありがとうね」
「ああ、仕事はもうほとんどない。しいて言えば、明日、雫とどこへ行くのかを決めるくらい」
「そ、それ仕事なの?」
「まぁ、ある意味、仕事だって」
おどけて笑うショウ君。
「だから、ずっといてくれてもいいんだけど、あまりに長いと、雫のご両親や烏丸さんから怪しまれるだろ。名残惜しいけど、また明日逢えるからさ」
「うん、そうだよね……。明日、またよろしくね」
再び私たちは抱き合う。
ショウ君は唇に優しくキスしてくれた。
胸がキュッとする。
「また明日な。おやすみ」
「おやすみなさい、ショウ君」
後ろ髪を引かれる思いだったけど、私はちらちら振り返りつつ、ドアへ向かった。
それから、寝る前の支度を済ませ、ベッドに入る。
すぐにショウ君のことを思い出して、幸せで幸せで、勝手に顔がほころんできた。
仕方ないよね……。
ずっとずっと想い続けてきたショウ君と、こんな関係になれたんだから。
そして、明日のことが楽しみで仕方がなかった。
山や展望台へ連れてってくれるって言ってたっけ。
すごく楽しみ!
そうしたことが頭の中を駆け巡り、なかなか寝付けなかった。
「そうだったのか……! 俺も幼稚園時代から好きだった。当時の俺は、そのことを隠してたけど。言ったら、雫との関係が壊れると思って。引越しが決まったとき、俺の心は絶望に打ちひしがれてたよ。それでも、できるだけ『何気ない様子』を装って、雫に伝えただろ。あれは確か、公園だったよな。今でもたまに思い出すよ。あの紅葉の落ち葉が、まるでじゅうたんのように降り積もった公園。雫と離れて、ずっとずっと喪失感ばっかりの日々だった。でも、これじゃいけないと思って。きっとまた逢えると信じて、俺は俺なりにやってきたつもりだ」
ショウ君も私のことをずっと……!
信じられない思いでいっぱいだった。
私は思わず、ショウ君の背中に回した手に力を込める。
ショウ君もきつくきつく、力を込めてくれていた。
「だから、烏丸さんから渡された雫のプロフィールの紙を見たとき、びっくりしたんだ。だけど、俺は何も言い出せないままだった。立場というものもあるし、それに……。雫が俺のことを想ってくれているだなんて、露ほども考えてなかったし。俺の片思いにすぎないと思ってたから、何も言えず。だから、ただ雫のそばにいられるだけで、俺は幸せだったんだ」
「嬉しい……! 私もずっとずっと、ショウ君だけを想ってたよ。この20年間!」
幸せのあまり、私は頭がボーっとしていた。
「ありがとな。ほんと、雫と再会できてよかった」
「こちらこそ! ショウ君、大好きだよ。残念なのは、この20年間だけど……。逢うこともできずにいた20年間」
「決して無駄じゃないさ。その期間があって、今の俺たちがいる。これから、俺たちの想い出を作っていけばいいだけ。そのためにも、俺はあさってまでに、全てに決着をつける。大丈夫、心配そうな顔をするなって。全て丸く収まるから」
ショウ君は笑みを浮かべると、優しく頭を撫でてくれた。
「あさって……待ってるからね」
「ああ。それに、明日がまだあるだろ。明日、また一緒に出かけるんじゃないのか」
「もちろん、一緒に出かけるよ!」
「ははは。急に元気いっぱいになったな。それでこそ、雫らしいよ」
楽しげなショウ君を見て、私も笑顔になる。
「明日もまた、よろしくね。どこに連れてってくれるの?」
「まだはっきりとは決めてないけど、山とか展望台はどうだ? 景色が良いスポットだからな」
「うん、是非お願い」
「おう、任せとけ」
それから、またしばらく、抱き合っていた私たち。
やがて、私が言った。
「お仕事、まだあるんだよね。忙しいところを、呼んでくれてありがとうね」
「ああ、仕事はもうほとんどない。しいて言えば、明日、雫とどこへ行くのかを決めるくらい」
「そ、それ仕事なの?」
「まぁ、ある意味、仕事だって」
おどけて笑うショウ君。
「だから、ずっといてくれてもいいんだけど、あまりに長いと、雫のご両親や烏丸さんから怪しまれるだろ。名残惜しいけど、また明日逢えるからさ」
「うん、そうだよね……。明日、またよろしくね」
再び私たちは抱き合う。
ショウ君は唇に優しくキスしてくれた。
胸がキュッとする。
「また明日な。おやすみ」
「おやすみなさい、ショウ君」
後ろ髪を引かれる思いだったけど、私はちらちら振り返りつつ、ドアへ向かった。
それから、寝る前の支度を済ませ、ベッドに入る。
すぐにショウ君のことを思い出して、幸せで幸せで、勝手に顔がほころんできた。
仕方ないよね……。
ずっとずっと想い続けてきたショウ君と、こんな関係になれたんだから。
そして、明日のことが楽しみで仕方がなかった。
山や展望台へ連れてってくれるって言ってたっけ。
すごく楽しみ!
そうしたことが頭の中を駆け巡り、なかなか寝付けなかった。