今宵も、月と踊る

「本当に、若女将になったんだねぇ……」

「やだ、冗談だと思っていたの?」

「今日、俊明さんは?」

「お得意先まで配達に出掛けているわよ。小夜によろしく伝えて欲しいって」

鈴花の夫となる俊明さんはこの三好屋の跡取り息子である。

初めて俊明さんを鈴花から紹介された時は本当に驚いた。まさか、老舗呉服店の若旦那を見つけてくるとは夢にも思わなかったからだ。

大学生の頃から和服好きで、着付け教室や和雑貨ワークショップにも通っていた鈴花と、跡取り息子として修行中だった俊明さんが恋仲になり、夫婦となるのも何かの縁だろう。

鈴花が勤めていた食品会社を辞めて、三好屋で女将修行を始めたのが1年前。

俊明さんと入籍したのが半年前。

そして、3か月後にはとうとう結婚式を迎えるのだ。

「小夜に似合いそうな物をいくつか出しておいたのよ」

鈴花は私を2階の大広間に案内してくれた。だだっ広い和室には所狭しと着物や帯が並べられていた。

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