今宵も、月と踊る

“苦しくて、苦しくて、何度も成典様の名前を呼んだわ。最後に成典様に逢いたいという願いは叶わず、私にはただの一度も奇跡は訪れなかった。
でも、誰も恨んでなんかいないわ。私は死ぬまで成典様を愛することが出来て幸せだった”

橘川家に伝わる伝説は事実が捻じ曲げられていた。

伝説は憎しみの連鎖の始まりではなく、悲しい結末に終わった恋の名残だったのだ。

“この通り、最初にカグヤと呼ばれた女には何の力もないわ。今も昔も虫一匹だって殺せない。ましてや、呪いなんてかけられっこないのよ”

「じゃあ…誰が……」

“カグヤ憑き”から心の半分を取り上げて、“カグヤ”に橘の痣を埋め込むことが出来たというのだ。

(まさか……)

「橘……成典……?」

呪いをかけたのが豊姫でないとすれば、そんなことが出来るのは“カグヤ憑き”の力の祖先である成典しかいない。

(成典自ら子孫に呪いをかけた?何のために?)

思わぬ事実の発覚に顔が青ざめる。

豊姫は成典が呪いをかけた張本人だという予想を否定も肯定もしなかった。

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