今宵も、月と踊る
(本当に……いつまで続くんだろう……)
離れに住み始めて今日で丁度、一ヵ月。桜の咲く季節はとうに過ぎ去って、目の前に広がる日本庭園は初夏を迎えようとしている。
借金を返済できるあてはなく、“カグヤ”は今日も囚われたままだ。
橘川家での生活は確かに楽だった。
満員電車に揺られることもなければ、夕食の献立に悩まされることもない。ゴミ捨てを忘れても問題ないし、洗濯だってしてもらえる。
橘川家の使用人の皆さんはとても親切で、どこの馬の骨ともわからない私が居心地よく過ごせるように常に気を遣ってくれた。
……ただ、“カグヤ”だという理由で。
一ヵ月も居ると、それなりに自分の立ち位置が分かってくる。
この離れは“檻”なのだ。“カグヤ”を閉じ込めるために用意された、とても贅沢な檻。
私も志信くんに見事に捕まってしまった。