もう一度君の笑顔を

友紀side

「俺も楽しかったよ。

 ありがとう」



彼が静かに、でもはっきりとした声で言った。


終わった。


私の恋が終わってしまった。


彼を見れば、苦しくなるほど切ない瞳で私を見つめて来る。


ねぇ・・・。その視線の意味は何?


まだ、少しは私を好きでいてくれてるってこと?



そんなこと問える勇気は無い。


彼が他の子と食事に行ったと聞くたび胸が張り裂けそうだった。


変わらずに私に優しい視線をくれる彼に私の心はときめいた。


その繰り返しに、私は疲れてしまったのだ。


どのれが彼の本心なのか、わからなくて。


彼を信じる事も、問いただす事も出来ない私は、分かれという『逃げ』を選択したのだ。


自分の皿を見れば、注文したパスタはいつのまにか平らげていた。


それを見てホッとした。


残すのは勿体ないし、かと言ってこの状況で食べられる強さは持ち合わせていない。


「じゃあ、私、帰るね。」


そう言って財布を出すと、


「最後くらい俺に払わせてよ。」


彼の『最後』という言葉に、胸が締め付けられる。


自分から別れたいと言っといて何と身勝手なことだろう。


「じゃあ、ありがとう。ごちそうさま。」


そう言って席を離れた。


レストランの扉が見える。


まだ泣くな、泣くな。


そう呪文の様に繰り返した。


扉をくぐった瞬間、視界が滲んだ。

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