もう一度君の笑顔を

光輝side

俺は今、最愛の彼女と食事に来ている。


来月の彼女の誕生日にはプロポーズをしようと考えていた。


「その日は、定時にあがれるようにするから、友紀も、定時にあがれよ?」


俺がそう言ったのに彼女は何の返事もしない。


「友紀?」


彼女の名前を呼ぶが、彼女は黙々とパスタを食べている。


そして、


「その必要は無いよ。」


と言った。


「え?」


驚いて聞き返すと、彼女が続けて


「別れよう。」


「・・・・・・。」


『なんで?』そう問いかけそうになり、口をつぐんだ。


理由なんてわかってた。


俺が彼女を傷付けたんだ。


彼女の潤んだ瞳がそれを物語っていた。


俺に、『別れたくない』そんなこと言う資格があるのだろうか・・・


つまらない見栄で最愛の彼女を傷付け続けた俺に。


何も言えないでいると、彼女は俺に言った。


「今まで、ありがとう。

 楽しかったよ」


そう言って微笑む彼女の目はさっきよりも潤んでいる。


そんな顔も愛おしいと思う。


抱き寄せて、抱きしめたいと。


でも、そんな資格、俺には無い。


自分の所為で失ってしまった。


まっすぐ彼女を見つめ返し


「俺も楽しかったよ。

 今までありがとう。」


そう告げた。
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