雪桜満開
「…ん、んん?」
なんだ?随分体が痛い…痛いけど軽い…?
なんだ、なんなんだ。もしかしてこれが死とかそういったものなのか。
「俺は死んだのか」
「生きてるよー、奇跡的にな」
「光?お前も死んだのか」
「だから生きてるよって」
ぺしっと音を立てて光に殴られた。
どうやら本当に生きているらしい…
「はっ、先輩!先輩は!?」
「生きてるよ、お前と違って怪我はしてたけどな」
「それはそうだろうな、あんな高さから落ちたら…」
ん?あんな高さから落ちた俺はなぜ無傷なんだ?
「そうだな、あんな高さから落ちたら怪我するのが普通だ…なんでお前は無傷なんだ?」
「分からん…が、厚着だったのが幸いしたのだろうな」
「へいへい…」
おかしいな…上着をパラシュートにしようと思って、しかしうまくいかなくて…
…そこから覚えていない。
「ん、花梨と…誰だったか、白浜?あいつらはどうした」
「先に帰ったよ」
「大怪我の俺を置いてか」
「頭の怪我ならいつものことって言ってたよ」
「俺は無傷だ」
「会話をしようぜ、会話をよ!」
暫く学校を徘徊した後、俺たちは帰路へと着いていた。
今日もしっかりと俺たちの印象を良くすることができたに違いない。
満足げに歩く帰り道には、少し雪が降っていた。
「あ、そういえば…花梨たちから中学校に行くって連絡があってよ、俺らも誘われてるんだけど…行くか?」
「俺は…止めておこう」
「なんで…ああ、雪降ってんのか…まあいいや。じゃあな」
「ああ、またな」
それだけ言うと光は小走りで中学校へと向かって行った。
そんな光を尻目に俺は逆方向へと歩いていく。
…雪が降った日には神社に行く。
それは俺が小学生の時から続けていることだ。
なぜか。
雪の中に咲く桜を見るためだ。
見るためとは言っても、今までに見たことはない。
それどころか見れる可能性だって少ない。
むしろ咲くことなんか“あり得ない”かもしれない。
だが俺の親父は確かに言った。
『雪が降る夜に、俺はあの神社で満開の桜を見た』
それだけだ。俺が雪が降った日に毎度毎度神社に行く理由はそれだけ。
もう3年間ぐらい続けているが、桜なんか咲く気配もない。
春には問題なく咲いているが、やはり冬に…それも雪が降る日に咲くなんて思えない。
だが、そんな“あり得ない”ことがあり得たなら…
俺が信じたい“あり得ない”ことがあり得るかもしれない。
“あり得ない”なんてことが、“あり得ない”ことを証明したい。
そう思って毎回神社に足を運んでいた。
だが…どうせ行ったところでいつもと同じ、何も起こらない。
行くだけ無駄。“あり得ない”ことは所詮あり得ない。
そんなことも毎回思う。
毎回思うのに行ってしまうのは…やはりまだ俺が期待してるからだと思う。
今日もそんな思いを抱えながら神社に向かう。
どうせ何も起こらない…今日が最後だ。
………
「前にも思ってたな」
なんだ?随分体が痛い…痛いけど軽い…?
なんだ、なんなんだ。もしかしてこれが死とかそういったものなのか。
「俺は死んだのか」
「生きてるよー、奇跡的にな」
「光?お前も死んだのか」
「だから生きてるよって」
ぺしっと音を立てて光に殴られた。
どうやら本当に生きているらしい…
「はっ、先輩!先輩は!?」
「生きてるよ、お前と違って怪我はしてたけどな」
「それはそうだろうな、あんな高さから落ちたら…」
ん?あんな高さから落ちた俺はなぜ無傷なんだ?
「そうだな、あんな高さから落ちたら怪我するのが普通だ…なんでお前は無傷なんだ?」
「分からん…が、厚着だったのが幸いしたのだろうな」
「へいへい…」
おかしいな…上着をパラシュートにしようと思って、しかしうまくいかなくて…
…そこから覚えていない。
「ん、花梨と…誰だったか、白浜?あいつらはどうした」
「先に帰ったよ」
「大怪我の俺を置いてか」
「頭の怪我ならいつものことって言ってたよ」
「俺は無傷だ」
「会話をしようぜ、会話をよ!」
暫く学校を徘徊した後、俺たちは帰路へと着いていた。
今日もしっかりと俺たちの印象を良くすることができたに違いない。
満足げに歩く帰り道には、少し雪が降っていた。
「あ、そういえば…花梨たちから中学校に行くって連絡があってよ、俺らも誘われてるんだけど…行くか?」
「俺は…止めておこう」
「なんで…ああ、雪降ってんのか…まあいいや。じゃあな」
「ああ、またな」
それだけ言うと光は小走りで中学校へと向かって行った。
そんな光を尻目に俺は逆方向へと歩いていく。
…雪が降った日には神社に行く。
それは俺が小学生の時から続けていることだ。
なぜか。
雪の中に咲く桜を見るためだ。
見るためとは言っても、今までに見たことはない。
それどころか見れる可能性だって少ない。
むしろ咲くことなんか“あり得ない”かもしれない。
だが俺の親父は確かに言った。
『雪が降る夜に、俺はあの神社で満開の桜を見た』
それだけだ。俺が雪が降った日に毎度毎度神社に行く理由はそれだけ。
もう3年間ぐらい続けているが、桜なんか咲く気配もない。
春には問題なく咲いているが、やはり冬に…それも雪が降る日に咲くなんて思えない。
だが、そんな“あり得ない”ことがあり得たなら…
俺が信じたい“あり得ない”ことがあり得るかもしれない。
“あり得ない”なんてことが、“あり得ない”ことを証明したい。
そう思って毎回神社に足を運んでいた。
だが…どうせ行ったところでいつもと同じ、何も起こらない。
行くだけ無駄。“あり得ない”ことは所詮あり得ない。
そんなことも毎回思う。
毎回思うのに行ってしまうのは…やはりまだ俺が期待してるからだと思う。
今日もそんな思いを抱えながら神社に向かう。
どうせ何も起こらない…今日が最後だ。
………
「前にも思ってたな」