恋宿~イケメン支配人に恋して~





洗い物を終えると八木さんは帰って行き、私も仕事をあがるべくタイムカードを切ると、ひとり別館を歩いていた。



あの日身一つで来て以来、慌ただしくまともな休みもない私は、以前同様また別館にある部屋で住み込みをさせて貰っている。

こっちに住むなら、そのうちちゃんと荷物持ってこないと。あと部屋も探さなきゃ……でも近くにアパートとかあるのかな。

思えばまだ立地や環境は分からないことだらけ。休みの日に近くを歩き回ってみようかな。



「理子。お疲れ」

「あ……千冬さん。お疲れ様です」



すると丁度向かいから歩いてきたのは、日付が変わろうとしているこの時間でもまだ仕事をしていたらしい千冬さん。

1日の終わりということもあり、相変わらず凛々しいその顔にもさすがに疲れが見える。



「洗い場手伝ってたんだって?悪いな」

「いえ。八木さんと話しながらやってたらすぐ終わったんで」

「口動かさなければもっとすぐ終わっただろうけどなぁ」



私語を注意するような言い方をしながら、呆れたように笑うと千冬さんはぽんぽんと私の頭を撫でた。



「千冬さんも、もうあがりですか」

「あぁ、一応。けどまだ書類関係の仕事が山のようにあるから、上の部屋で仮眠取ってからやろうと思ってな」



ひとり暮らしのアパートには今日も帰らないのだろう。疲れたように首を回す彼に、その苦労を感じ取る。



そういえば昨夜は夜勤で、そのまま朝からこの時間まで仕事で……まともに寝てもいなくて、疲れてるんだろうな。

本当は少しだけでも一緒に過ごしたいけど、この状況でそれを言ったら迷惑かな。疲れてるからって断られるかも。



けど少しだけ、でも迷惑かも、望む気持ちと怯む気持ちがぐるぐると交互に出てきて戸惑わせる。



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