ミントグリーン~糖度0の初恋~
「……引っ越しいつ?」
「来週末。早めにあっちに行って慣れておきたいし。千波は?」
「私は入学式ギリギリまでこっち。親がうるさくてね」
「はは…。千波んちは過保護だからねぇ。
よく東京の大学に行かせてくれたと思うよ」
そりゃあ、恐ろしいほどの時間をかけて説得しましたから。
ここは進学校で、卒業生の殆どが大学に進学する。
地元では選択肢が限られてしまうので、首都圏や他地方へ行く子が多い。
雪も私が進む大学とは離れているが東京の大学に進学が決まっていた。
校門までの道のりをいつも以上にゆっくりと歩く。
たまにすれ違う後輩たち。卒業証書を持った私たちに頭を下げてくれる。
「もう、ここを歩くこともないのかな?
あ、千波はまたここに戻ってくるんだ。教育実習でね」
「目標通りに進めたら…ね。
でも戻ってきても制服は着てないんだよね」
自分の制服を見下ろしながらしみじみ言ってしまった。