ミントグリーン~糖度0の初恋~
そのまま床にへたりこみ、すぐそばのローテーブルに置かれたスマホに手を伸ばす。
後で小言がたくさん待っていると思ったが背に腹は代えられない。
この状態で自力で病院に行くことに不安を感じた私は兄へ電話した。
夕方から出勤の兄はまだ家にいるハズだ。
…………出ない。
っていうか、『電波の届かない……』アナウンスって兄は一体どこにケータイを置いているんだろう?
時間を確認すると8時半。
まだ、お仕事前だよね…。
思い切って踊子さんに電話を架けた。
今度はすぐに繋がる。
『もしもし?千波ちゃん?』
朝から爽やかな踊子さん。
『お義姉さん……』
起きてから初めて発した声は恐ろしく掠れてて、弱々しかった。
『え?千波ちゃん!? ひどい声だよ!?どうしたの!』
『ごめんなさい…扁桃腺炎になったみたーーゲホッゲホッゲホッ……』
最後まで喋れず、テーブルに突っ伏した。
有り得ないくらい喉が痛い…。
『千波ちゃん!? 大丈夫?』
初めて聞く踊子さんの取り乱した声に私は咳き込むばかりでなかなか答えられなかった。
「……ごめ……ッケホ……お兄……に……ッケホ」
『もう喋らなくていいから!
すぐ行く!すぐ何とかするからね!!』
慌てた様子で切れる電話。
迷惑かけちゃった……。そう思いつつも何とか緊急事態を伝えられたことに安心して、私はテーブルに顔を伏せて目を閉じた。