ミントグリーン~糖度0の初恋~
「じゃあ、またね」
シンタくんに手を振って、佐藤さんたちに会釈してドアに手をかけた。
「じゃ、マスター千波ちゃんは間違いなく送りますんで」
柿本さんが私が開けたドアを押さえて先に外に出してくれた。
びっくりした。
どんなバッドタイミングで来てくれるのよ!
佐藤さんたちは少しも悪くないのに八つ当たり気味にそんなことを思ってしまうのはお許しいただきたい。
「賑やかな団体さんだったね。
あんな常連さんもいるんだ。
じゃ、行こっか?」
柿本さんが閉まったドアを振り返りながら息をついて、私に向かって笑ってくれた。
「ちょっと待って!!」
私たちが階段を下りきったところで大きな声が響いて、シンタくんが勢いよく駆け下りてきた。
「千波、本当にごめんな?」
駆け下りてきた勢いそのままに私の目の前に小さな紙袋が差し出される。
「今夜、また電話かメールするから」
「うん……。分かった。待ってるね」
受け取った紙袋からは甘い香り。
確認するまでもない。手作りマドレーヌだ。
「かっきーにもあげる。千波のことよろしく」
柿本さんにも紙袋を押し付けて、シンタくんは元来た道を駆け上っていく。
結局私はシンタくんに『ありがとう』も『ごめんなさい』も言えないままに、その後ろ姿を見送っていた。