モラトリアム
西園と初めて喋ったのは、アイツが提出してきた領収書の件だった。
あからさまにキャバクラと分かる名前、そして金額がこれまた尋常じゃない。
私は本人に確認すべく、営業部に押し掛けた。
「西園くん。これは何?」
「ん、なんの事ですか?」
「これよ、これ!」
目の前で領収書をちらつかせ詰め寄る。
「部長が出せって言ったんですよ」
「は?部長が?」
「あとで確認してみて下さい、飯野さん」
悪びれた素振りもなく、シラっと言うその姿に半ば怒りがこみ上げる。
「ふふ。電話で聞けば済む話なのに、先輩って熱くなりやすいんだね」
その言葉で私の中の怒りが頂点に達した。