年下彼氏
「ちょっとお姉さーん。
ちゃんと歩いてよ、足引き摺ってさ」
いやいやいや。
嫌だからこそ、こうやって足を引き摺って抵抗してるんですけど。
私の腕をつかんで引っ張る彼にとって、私の抵抗はへでもないみたいだった。
だって、満面の笑みで・・・・・・本当に嬉しそうな顔してる・・・。
誰か助けてはくれないかと、辺りをキョロキョロと見渡した。
だけど、いつの間にか景色は移り変わり、住宅街からなにやら怪しげな商店街みたいな・・・。
とにかく、私みたいな平凡な人ならば決して関わりのない場所だった。
道端でタバコを吸う人や集団で広い道を歩く人も、私の状況を見て
・・・なんだまたか、とでも言うような目で見つめるだけ。
こんなのは、当たり前みたいだった。
ただ、一般庶民の私が派手で荒れほうだいの人に巻き込まれただけって感じだ。
誰も助けてくれる人はいない。
――どうしよう。
本気でそう思っていたときだった。
どんっ
急に止まった男の子の背中に鼻をぶつける。
「――っ、」
何?と鼻を摩りながら言おうとしたとき、顔を上げた瞬間に息が詰まった。
「さ、入ろうか」
屈託の無い笑顔を私に向けて手に力をこめる男の子。
彼が入っていこうとしている建物は――
明らかに、ラブホテル。