【完】矢野くん、ラブレターを受け取ってくれますか?





「……はぁ」



私も自分の席に着き、ため息をついた。
今日、何回ため息つくんだろう。
運の悪い自分がイヤになる。



「はーい、授業始めるぞー」



「きりーつ」



数学担当の先生が教室に入ってきて、委員長が号令をかける。



「礼、着席」



礼をして、着席したときだった。



―――バンッ



急に教室のドアが勢いよく開かれた。
ドアの向こうにいた人物を見て息が止まりそうになった。



「ごめーん!ちょっと遅刻しちゃった!」



先生に、許して!とお願いする多田くん。
そして……。



「お前は……矢野、拓磨か……?」



拓磨くんだったから。



先生の口にした名前を聞いて、教室は一気にざわつく。
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