【完】矢野くん、ラブレターを受け取ってくれますか?





葵ちゃんと教室に入ると、多田くんはもう来ていて、一目散に葵ちゃんに抱き付いた。



「葵ちゃんおはよー!!!」



「はいはい、おはよう……」



「今日も可愛い~~はぁ~~いい匂い……」



葵ちゃんの首に顔をうずめて幸せそうな多田くんに、私は呆然とする。



「やめて!恥ずかしいからっ!」



「照れなくてもいいのに!はぁ……もう可愛いなぁ……」



相変わらずの多田くんと葵ちゃんのやりとりに、クスッと笑う。



「あ、美憂ちゃんもおはよ!拓磨は?」



「拓磨くんはしばらく休むって」



「……へぇ、そっか」



私の言葉を聞いた途端、多田くんは少し険しい表情をした。



どうしたんだろう?




「……多田くん?」



声をかけると、ハッとしてまた笑顔に戻った。



「なにもないよ!拓磨がいないとつまんないな~~」



多田くんのさっきの表情がなんだか少し引っかかった。
……けど、きっと考え過ぎだよね。
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