そんだけ。―『好き』が始まった日の話。
がたごとがたごと。


指先同士が少しだけ、ずっと触れ合っていた。


何度目かに見たとき、その人は眠っていた。

影を落とした睫毛の長さにうらやましくなった。


がたごとがたごと。

電車がちっちゃく揺れて。

肩が触れて。

あたしは動けなくなった。

行きより速く感じる帰りの電車。
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