猫少女と歩けないぼく
「あの……。えっと……」
車椅子のぼくは、自分より背の低い女の子に見降ろされるのは慣れていた。
でも、しゃがんでにぃと戯れている彼女に上目遣いで覗き込まれるのには、全く慣れていなかった。
「君の飼い猫だった?」
少女は首をかしげならそう尋ねた。
うしろでお団子に髪をまとめている彼女が、首をかしげるのと同時に髪が揺れる。
「あ、はい…。にぃって言うんですけど」
「叫んでたから聞こえてたよ!ね、にぃちゃん」
にぃはおとなしくしているどころか、少女の脚にまとわりついた。
ぼくは呼び声をきかれていたことに頬が熱くなるのを感じながら、それを悟られないようにと会話を続ける。
「にぃが家族以外に懐いてるのなんて初めて……ですよ。よかったらもうちょっと触ります?」
「いいの?私も猫ちゃんにこんなに好かれるの初めてかも!嬉しい!」
ぼくは嬉しそうに笑う彼女がとても輝いて見えた。
「にぃちゃんかぁ。可愛いなぁ。このこのー」
ぼくは、にぃをとられたようなちょっとさみしい気持ちと、にぃを褒められた嬉しさに複雑な気持ちを感じながら、彼女とにぃを見守っていた。

「あ、ごめんね!私時司 雫(ときつかさ しずく)っていうの!」
突然思い出したように、ぼくの方を見て時司さんは挨拶をした。でも、にぃを撫でる手は緩めない。
「あ、ぼくは……上総 錬(かずさ れん)っていいます…。すぐそこの井戸田高校の2年です」
井戸田高校は付近では一番偏差値の高い高校である。でも、スポーツのできないぼくが勉強する時間があるのは当然だから、頭がいいとも思わない。
「え……あー。私も…2年だ」
突然歯切れの悪くなった彼女だったが、すぐに表情を明るく戻す
「じゃあ、私たち同じ学年だから錬くん敬語じゃなくていいよ!」
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