『好き』と鳴くから首輪をちょうだい
結構な長い時間、梅之介は黙りこくっていた。そして、「もういい」と一言だけ呟いた。


「梅之介?」

「いや、なんでもない」


梅之介はすっと立ち上がって、私に手を差し出した。


「泣き止んだなら、帰ろう。薄着のままで出て来たから、寒いだろ」

「? うん」


手を取ると、梅之介が急にその手をぐっと引いた。よろけた私は梅之介の胸元に倒れ込む。


「わ、わあ!」


腕がするりとまわり、気付けば私は梅之介に抱きしめられていた。


「う、梅之介⁉」

「もう、眞人のことは忘れろ。僕が白路のそばにずっといる」


耳元で、梅之介が囁く。


「僕は、眞人も好きだよ。だから、白路が眞人と幸せになるのなら、それでいいと思った。自分の気持ちを伝えただけで満足してもいいと思ってた。だけど、眞人が白路を捨てるのなら、もう諦めない。かっさらってでも、僕のものにする」

「う、め……」

「何も言わないで。もう決めたから」


梅之介の肩越しに、夜空が見える。
儚く瞬く星は頼りなくて、だからこそ美しい。
私は幻のようなそれを、呆然とする頭で眺めたのだった。

果てしなく感じた長い時の果て、梅之介が私を離した。


「梅之、介」

「『飼い犬』ごっこは、眞人がここにいる間だけだろう? その間、僕はもう何も言わない。眞人がいなくなるまでは、僕も、お前たちの馬鹿みたいな話に付き合ってあげる」

「いなくなる、まで」

「そう。それから先は、もう白路は僕のものだから」


有無を言わせない口調。
真っ直ぐ射抜かれるような、強い意思のこもった瞳。
しかし私はそれに頷くことなど出来なくて、ただ、梅之介を見つめ返していた。


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