『好き』と鳴くから首輪をちょうだい
「何やってんだよ、トロくさいな、もう」


少し行った先で、梅之介と眞人さんは待ってくれていた。着物男子ふたりというのは目立ってくれるので本当に助かる。


「ご、ごめん。つい、見送ってた」

「バーカ」


ハアハアと息を切らす私の頭を、梅之介が軽く小突く。それから、梅之介は眞人さんの方を見た。


「ていうか、眞人もなにぼんやりしてんのさ」

「え? ああ、すまん」


考え事をするように顎先に手を添えていた眞人さんが、慌ててぎこちなく笑う。


「どうしようかと対応に困ってたとこだったから、助かった。ありがとな、クロ」


眞人さんの大きな手が、梅之介の頭をぐりぐりと撫でる。


「ふん。僕は邪魔されたのを怒ってるんだよ」


子どもらしい扱いをされて怒るのかと思いきや、梅之介は少し照れたようにつん、と顔を背けた。


「散歩の途中で立ち止まった飼い主に、飼い犬が早く行こうって急かしただけだよ」

「ぷ、我儘なペットだな。しかしまあ、そうだな。じゃあ待たせたお詫びに、何か買ってやろう。何食いたい?」

「トウモロコシ!」

「ん、分かった。シロ、お前も食うか?」


私の方を見て、眞人さんが言う。
その顔つきには、さっきの冷たさは欠片も残っていなかった。

さっきのは一体何だったんだろう……。

訊きたいけど、訊けない。
それはまだ、私が立ち入ってはいけない部分だと思う。


「あー……と。食べ、ます」

「よし、じゃあ買いに行くか」


言って、眞人さんが先を歩き出す。
今度は、私と梅之介が後ろから追いかける形となった。梅之介の横をとたとたと歩く。


「……ふう、ん。華蔵、ねえ。なるほど」


眞人さんの背中を見つめていた梅之介が、ぽつんと呟いた。


「腕がいいわけだ。へえ」

「梅之介、華蔵って知ってるの? 華蔵ってなんなの?」


何か知っている風な口ぶりだったので、顔を覗き込んで訊く。
私を見下ろした梅之介は、べ、と舌を出して見せた。


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