見えない異変
なんで、お母さんがここにいるの?

あまりに予想外で声が裏返ってしまった。

あんたが家で倒れてたって聞いて、心配で飛んできたのよ。

けれど、ただの過労だったみたい。

ちょっとバイト入れすぎなんじゃない?

もう少し減らせないの?

母の言っていることは辻褄があっていた。

私はバイトをかなり入れていた。

確かにあんなに入れていたら過労でいつ倒れてもおかしくなかった。

だけど、そうじゃない。

私が倒れた理由は過労なんかじゃない。

美帆、美帆がいないって言われて。

母は美帆のことを知ってる。

電話で話したときに美帆のことは何度か話しているし、一緒に旅行に行ったとき撮った写真を母に見せている。

お母さん、美帆は?

美帆、知ってるよね。

美帆のことを知っててほしいと祈る気持ちで尋ねた。

けれど、母は知らなかった。

誰、それ。

寝ぼけてるんじゃない。

そんな返答にがっかりしつつも、スマホにはもしかしたら写真があるかもしないと期待した。

だが、またしても私の期待は打ち砕かれた。
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