On Your Mark
「そうだね」


僕の肩に手を置いて、イビルが笑う。



その手にいつも以上の温もりを感じ、僕まで同じように笑ってしまった。


「さて、能力も効かなくなったし、ここからは如何に相手を先読みできるかが大事になる」


「・・・」


「と、いうのが相手を『攻める』ことにおいての定石だろうけど、僕たちは相手を攻めるわけではない。

じゃあ、僕たちは何をしていると思う?」


足を止めずに淡々と話すイビル。

その姿はどこか学校の先生のようだった。


「攻めていないから、『守る』・・・か」


「違うよ」


「『逃げる』じゃないの」


「それも少し違う」


僕とレイはそれ以上のことを思いつけずに、何も考えようともせずにイビルの答えを待とうとしている。

そんな二人の様子を見て、イビルは「やれやれ」というような感じで両手を広げた。
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