On Your Mark
『空』という憧れ
昼を過ぎた辺りにジープの燃料が切れ、更にその一時間後にペスチニアはインテルH2009を使用した。

使用した例は過去になく、史上初めて能力を無効にする兵器、能力者を無にする兵器は今ここに姿を見せつけたのだ。



初めて使用するということで僕たちは失敗ということを期待したが、そのようなことをするほどペスチニアの科学者や本部の連中は見かけ倒しではないのだろう。

僕たちはそれぞれの能力が全く効かなくなり、ペスチニア軍とユーシチール軍の二つの動きが全く断定できなくなった。


「しかし、凄いね」


「感心してる場合じゃねえだろ」


二人ともこの兵器の力に驚いているというほどでもないが、全く意識していないというわけでもなさそうだ。

そういう僕自身も意識していないのかと言われれば、それは嘘になる。


「能力が無くなって、逆にすっきりして良かったよ」


能力が嫌いだった。



能力のほうが最初で、戦争が後からだと分かっている。

それでも、この能力は戦争のために生まれてきたように思えてならなかった。



だから、僕にとってはこの状態は悪くない。
< 32 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop