心の裏側と素肌の境界線を越える為に
「…で?お前は、片桐が好きなのか?」


次日、登校してきた俺の姿を見つけると、

正利は俺の腕を取り、屋上まで連れてきた。

屋上のドアを閉まると、振りほどくように俺の手を離した。

「な、何だよ」

突然連れて来られて訳がわからない俺に、言ったのが、上の言葉だった。

「好きなのかときいてるんだよ」

少し苛立つように…そして、呆れながら言う正利の真意を、俺は理解できなかった。

だから、一応素直にこたえた。

「ああ…」


頷く俺を見て、正利は頭を抱えた。

「やっぱり…そうか…」

正利は俺から離れ、屋上のフェンス越しに登校してくる生徒達を見下ろした。


そして、ため息とともに、呟くように言った。

「やめておけ…」
< 56 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop