一週間、魔法使いになります。
「柚! やめて! 行っちゃ駄目なの!」
「なんで駄目なの? 一週間だけだし……」
「そういう問題じゃないのよ……! お願いだから、行かないで!!」
なぜそんなにあたしが魔法界に行くのをやめさせようとするのか、全く分からない。
でも、今までに見たことがないくらい必死な様子に、只事じゃないってことは理解できる。
けど……一度ミミさんの使った魔法を見てしまったあたしは、好奇心を抑えられない。
もっと見たい。不思議なものを、この世界にいたら見れないものを見てみたい――――そんな気持ちが胸に広がっていた。
幸か不幸か、女王さまがあたしの意見を尊重するようママに言う。
「姉様、柚葉ちゃんの気持ちを優先して考えてあげましょ。たった一週間だけじゃないの……それともなにか、言えない秘密があったりするのかしら?」
妖しく微笑む女王さまに言い返せないのか、すっごく悔しそうに唇を噛んでる。
ごめん、ママ。それでもあたしは……魔法界に行ってみたい。
あるわけないと思っていた魔法が、不思議なものが、手に届くところまで来てる。
こんな状況下にいるのはきっと世界であたしぐらいだろう。そんなレアな機会を逃すわけにはいかない。
テストの点数も悪いし、迷惑心配ばかりかけていながら図々しいけど……こんな娘のわがままを許して下さい。
誰も喋らなくなった空間の中、女王さまが今までの口論を締めた。
「じゃあ姉様も反論はないようだし、決定ね」
「なっ、ドリアっ!? まだ私はいいなんて一言も……!」
「じゃあ人間界の明日の朝、一〇時頃にミミに迎えに行かせるわ。洋服入らないし、大事なものだけ持ってきて頂戴。大抵の物はこちらで用意させるから」
「は、はい!」