婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
店を出ると初秋の風がサラりと吹いて心地よかった。

田中と藤原氏は2軒目に行くらしい。いそいそと夜の街へと消えて行った。私は中谷先輩に駅まで送ってもらう。

大通りから一本外れた川沿いの桜並木の小道を並んで歩く。

「しっかし、今日は変なメンバーでしたね」

たいして面白くもないのに私はケラケラ笑う。酔っ払って気分は上々だ。

しかし、中谷先輩は何だかぼんやりとしていて上の空だ。

「中谷先輩?」私が顔を覗きこむと驚いたようにビクリと身体を痙攣させた。

「どうかしたんですか?さっきからボーっとしてて。まさか酔っ払っちゃいました?」

いや、といって中谷先輩は口元を押さえて視線を逸らす。

「もーなんですかー。好青年も悩み事はあるんですかぁ」

酔っ払った勢いで私は馴れ馴れしくもしつこく絡む。

「遥ちゃん、サンオクエンってどういうこと?」

中谷先輩は真っすぐ私を見つめて尋ねる。

突然の踏み込んだ質問に私の心臓は大きく跳ねた。

「サンオクエンと葛城との婚約には、何か関係があるの?」

アルコールが一気に身体から抜けて行く感じがする。

私は何をどう言っていいか解らず、ピシリと固まった。

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