婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「僕達もご一緒したいところですが、引っ越しの荷物を運ばなければいけないので、お父さんだけでも奥でゆっくりお寛ぎください」

「いやいや、お茶をご馳走になったら私も手伝うよ」

「では僕らは先に離れの方へいっています。場所は轟さんが案内するので都合の良い時にお声掛けください」

「私もお茶したいなー」さりげなく主張してみるが「遥がいないと家具の配置が決められないだろう」と葛城にやんわりとたしなめられる。

口調は優しかったがこちらを見る目は全然笑ってない。

遅刻したくせに、ゆっくりお茶などふざけんな、と言いたいのだろう。

「そ、そうね。じゃあ、パパ私は先に行ってるわ」

「そうかー?悪いなぁ」その呑気な口調が今は少しだけ腹立だしい。

パパを残し、葛城本宅を後にするとガレージへと向かう。

「あの…ごめんね?遅くなっちゃって」

私は上目で顔色を伺いながら言う。

「ホント待ちくたびれたよ」

匠さんは溜息をつきながら言う。

「でも、まぁ、これからずっと一緒だから」

そして私の手をとってにっこり笑う。

これは作り笑顔なんかじゃない。と、信じたい。

「なにイチャイチャしてんだよー」

声を掛けられ、驚いて軽トラの方へ振り向くと、藤原と田中が荷物を車から降ろしていた。

「ちょ…なんで貴方達がいるのよ?!」

私は驚いてギョッとした表情を浮かべた。

「バイトでーす」

藤原が死んだ魚の目をして言う。

「ば、バイトって…どうゆうこと?」

私は怪訝な表情で言う。

< 175 / 288 >

この作品をシェア

pagetop