婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「あ、絶対何かあったでしょ?!」鋭く瑞樹が指摘する。

「おいおいおーい、匠もやるなあ。会って速攻お手つきとは!」藤原は、あははーっと陽気に笑う。

「問題ないだろ。結婚するんだから」田中もシレっと言って除けた。

「まあ、遥ったら意外と大胆ね」遥までそんな事を言い出す始末。

「ヤッてないわよ!」

思わず私は大声で叫んだ。

その瞬間、周囲の視線が一斉に集まる。

…ああ、消えたい…

田中と藤原は爆笑しているのを尻目に私は真っ赤になってテーブルの上に伏せた。

昨日から、私の人生が狂い始めた… 全てあいつのせいだ。

結婚という現実は受け入れられたけど、せめてその日までは心中穏やかにキャンパスライフを過ごしたい。

最後に残された執行猶予なのだから。

私はガバっと顔を起こす。

「葛城さんは?一緒じゃないの?!」

「匠なら2号館の245号室にいるぞ」田中はまだニヤニヤしている。

「ありがと」私は荷物を持って席を立った。

「私葛城さんと話してくるわ」

「ええ?!どうしたのよ、いきなり」瑞樹はキョトンとしている。

「婚約破棄か?!」藤原はワクワクした顔で言う。

「まさか!嫁にしてもらわなきゃ我が家は破綻よ」

「何だ、昨日の熱い夜を思い出して早速会いたくなったのか?」また田中が下らん事を言っているが無視だ。

「EU経済はパスする。後でLINEするね」

「おっけー」瑞樹はヒラヒラと手を振り見送ってくれた。
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